「わたし、定時で帰ります」は近年世の中に浸透しつつある「働き方改革」というキーワードをテーマに、「長時間労働」「残業問題」「ライフとワークのバランス」について描き出すドラマです。
第1話、第2話を見た感想から、このドラマについての考察をご紹介していきます。
ドラマ第1話を見た感想と考察
素直に面白いです。
ドラマ第1話では、仕事命、残業当たり前の上司と、なぜそこまでしなくてはいけないのかわからない新人との対立を軸に、パワハラ問題と仕事に対する考え方に焦点をあてたストーリーでした。
仕事も自分の人生のキャリアを考えたときに、いま自分がどこまでがんばらないといけないのかを考えた上で力の配分を決めるべきであって、人から言われても、会社に一定の給料の対価として労働を供与している以上、拒否する権利はあるはずです。
だからこそ、仕事命、残業当たり前の三谷が
「やって無駄なことなんてない。仕事を取るためには人の倍、十倍のことはやらないと」
という言葉は、それを自分のキャリアで大事だと思っている人には当てはまる言葉ではあり、そうでない人には”パワハラ”となってしまうのです。
つまり、三谷がすべきは新人のキャリアに対する考え方をまず知ること。
新人がこの仕事を自らのキャリアとして築きたいと思っていれば、三谷の行動は間違っていないのです。
ただし、新人にとってまだキャリアがなんであるか定まっていないことも考えられるため、もしかしたらそこを含めて指導は必要になってくるのかもしれません。(自らのキャリアを決められない社会人は甘えでしかないかもしれませんが。)
そして種田が言った言葉
「三谷さんは何も間違ってない。‥仕事もしっかり出来てる。分析も丁寧。三谷さんが何を大事に思って仕事してるのか、よく分かる」
これは、三谷のキャリアに対する考え方について述べた言葉であり、新人への対応の仕方が正しいといっているわけではありません。
三谷が自分のキャリアを実現する上で、それに向かって全力疾走するのは間違いではない。
しかし、だからといってそれを望んでいない人に強要することは間違っています。
最後に、SNS上で書かれた言葉にとても強く共感を覚えます。
「日本人は遅刻にはうるさいのに、どうして就業時間にはルーズなんだろう」
これは、海外に進出した日系企業で現地で雇用された方から実際によく聞く言葉だそうです。
「始業時間を守らないといけないと強く言われるのに、終了時刻は守らない。時間になったから帰れとは言われない。」ことに不満を覚える現地社員が多いそうです。
ドラマ第2話を見た感想と考察
とても明るく振舞い、産休、育休中の遅れを取り戻そうとするワーママ(ワーキングマザー)のお話しです。
女性はどうしても産休、育休によって仕事を休む必要があり、その間の仕事のキャリアは中断されてしまう。
そのことに危機感を持つ女性も多ければ、中断されてしまうのだからと最初からあきらめている女性もいます。
最近では、産休、育休によって中断したキャリアを中断とみなさないという企業も出てきています。
ただし、これは産休、育休をとらない人、特に未婚の女性にとっては少し違和感がありますよね。
ではこの違和感の正体はなんでしょうか。
産休・育休に対する違和感
多くの日本企業では、長く働き続けること、長くその業務に携わった経験が評価されるポイントというように見えます。
しかし、欧米の企業は少し違います。
その社員が当初にコミットした目標に対してどれだけの成果を出したか。
これにつきます。
そこが日本の終身雇用を前提とした企業の成り立ちと、会社とは自分の得意分野で成果を出せる業務がそこにある器であるという考え方の欧米の大きな違いだと思っています。
欧米では、業務に対してコミットをするわけであり、就業することに対してコミットするわけではありません。
ひとりひとりが会社と対等な契約をし、その契約に記載のあることを実現することが”会社で働く”という意味なのです。
その契約以上のことをしたい、契約以上の能力が身についたとなれば、その会社で同じことをし続ける必要はありません。
もっとその能力を必要とする会社にいくだけです。
自分が今以上にパフォーマンスを上げられるところで働くことが出世であり、それが同じ会社かどうかは重要ではありません。
欧米における育休・産休の考え方
欧米でも産休・育休によってキャリアが中断してしまうことは問題とみなされます。
そしてアメリカでは産休・育休という制度が基本的にはほとんどありません。
女性は出産直前まで働き、出産後すぐに戻ってくるのが通例です。
女性にとって厳しい社会だと思われがちですが、逆に言えば会社が女性を必要としていると認めていることでもあります。
「あなたがいないと会社はまわらない」ということで、その女性が長期に休暇をとっても会社が回るなら、それはどういう意味かとも考えられます。
日本だと、産休育休中のフォローを、その部署にいる人間が行うことが多いと思いますが、それではなぜ産休・育休をした人の分まで私が働かないといけないのかという不満が出てくるでしょう。
これは会社が解決すべき問題であり、もしフォローをしなければならないならその分の対価を支払って、あらたな雇用契約を結びなおすことが必要ではないでしょうか。
少し長くなりましたが、「産休・育休をした社員のキャリアを中断とみなさない」というのが、どういう意味なのか正確に会社側に確認する必要があると思います。
そして、自らも人生のキャリアで考えたときに 「産休・育休をした」ことが、どういう意味を持つのか考える必要があるということではないでしょうか。
ドラマの中の話題の名言
結衣は自分の子供が熱を出しても、自らの失態で皆に迷惑をかけたからと帰ろうせず、悩みつつも意地を張る先輩にこう言います。
「先輩は何と戦っているんですか」
これはある女性にとって共感を得られる言葉であると同時に、いまの日本企業ではそうせざるを得ない、戦わないと自分の仕事のキャリアが失われてしまうと思う女性にとって、違和感を覚えさせる言葉でもあったように思います。
逆に先輩賤ケ岳の言葉
「東山が 子供の頃さ、熱出した時父親が会社を早退なんかした? 」
これが私のこころに一番刺さりました。
多くの男性には経験のあることではないでしょうか。
まさにそういうことなんだと思います。
多くの妻は夫が頼りないから子供が心配になる。
でも妻も生まれながらにして子供を育てる能力が備わっているわけではない。
つまり、夫がその能力を身につける方法、もしくは社会がセーフティネットとなる仕組みがないと、一向に妻が自分のキャリアを実現させることができないのではないでしょうか。
まとめ
■第1話
働き方改革という名のもとに、すべての人間が画一的である必要はなく、それぞれの人間のキャリアプランに応じた働き方をすればよい。
ただし、それを人に押し付けてはいけない。
あくまでも、相手のキャリアプランを知った上での指導であるべきだと思います。
■第2話
日本企業の終身雇用という古い制度に引きずられた考え方であるといえる。
仕事とは会社とコミットした業務に対していかに成果を出すかということであり、「産休、育休によってキャリアが中断する」という考え方は、会社にいることがキャリアにつながるとする考え方。
いまの日本企業ではそう考えざるを得ないが、産休・育休を使ってキャリアが中断してしまうのは、パートナーとの連携ができていないから。
第2話では夫が育休をとって子供の面倒を見ていますが、子供が熱を出したら親は心配になるのは当然。
ただ、心配をしなくてはいけない環境が問題。
夫では頼りないと思うから心配になるというのが本音なら、社会でケアできる環境を整備すべき問題だといえるのではないでしょうか。
TBSドラマ「わたし、定時で帰ります。」
毎週火曜日夜10時~
TBSでは、4月期の火曜ドラマ枠(毎週火曜よる10時)で『わたし、定時で帰ります。』を放送することが決定した。「長時間労働」、「サービス残業」、その先に起こりうるかもしれない「過労死」。長時間労働の是正や雇用形態にかかわらない公平な待遇を目指す「働き方改革」が近年、多くの関心を集めている。本作は、同名小説を原作に、特に注目を集めている「残業問題」を切り口として、単なる制度改革ではなく働く人々の意識改革=社会人の持つべき“ライフワーク・バランス”について描く。厚生労働省が声を上げても、「理想と現実は別、残業は仕方ない」と諦めている人や、「残業する美学」を持つ人々も多数存在するのが今の日本社会。本ドラマは、そんな現代の日本で“定時で帰る”“残業しない”をモットーに生きる新世代のワーキングガールを主人公に、曲者ぞろいのブラック上司や同僚たちの間で奮闘しながら、毎日に小さな奇跡を起こす。現代社会が抱える、曲がった仕事観や恋愛・結婚観、人間関係、ブラック企業問題、孤独死などの身近にある様々な社会問題を考え直し、「何のために働くのか?」「自分を大切にすること」「仲間を大切にすること」などのシンプルなメッセージを伝えていく。
引用元:「わたし、定時で帰ります。」TBS公式ホームページ(2019年4月30日引用)
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