AI元年と呼ばれた2017年からもうすぐ1年が経過しようとしています。
2045年には人間の知性を超えるとまで言われたAIが、人間の仕事を奪うといわれ、あちこちでニュース、雑誌にとりあげられてテレビで特集を組まれ、様々な解説者が議論を戦わせています。
本当にAIは自分たちの仕事を奪うのか。
本当にAIによって人間は仕事を奪われるのか?
マネー・ワールド~資本主義の未来~第2集▽仕事がなくなる!?
爆笑問題と共にお届けする、経済エンターテインメント。第2回は、AIやロボットが私たちの懐に与える衝撃。人間の仕事をAIやロボットが担うようになり、私たちは富を生み出せなくなるという時代が目前に迫っている。AIロボットが幅を利かせる近い未来、私たち人間はどのようにして生きていけばよいのか、知恵を振り絞って考える。ゲストは、ソフトバンクグループ社長の孫正義さんと、国立情報学研究所教授の新井紀子さん。
出典元:NHK 「もっとNHKドキュメンタリー」 2018年10月7日21時 放映
https://movie-s.nhk.or.jp/v/a71g6xmv
ソフトバンクグループは先日、トヨタと自動運転の会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)株式会社」の設立を発表したばかり。
自動運転分野でAIはソフトバンクが優位であると印象付けました。
2018年10月04日
「ソフトバンクとトヨタ自動車、新しいモビリティサービスの構築に向けて戦略的提携に合意し、共同出資会社を設立」
新井紀子氏は日本の数学者で、国立情報学研究所社会共有知研究センター長であり、2011年よりAIが東大に合格できるのかという「東ロボくん」プロジェクトをリードしてきた人物です。
ちなみに、「東ロボくん」プロジェクトは最終的に東大に合格することができませんでした。
ただし、俗にいう「MARCH」と呼ばれる「明治大学、青山大学、立教大学、中央大学、法政大学」には合格できるロボットの開発は成功しています。
新井氏は「東ロボくん」プロジェクトは、東大に合格させることが目的なのではなく、AIが実際にどこまで人間の知識に近づいているのかを計測するための実験であり、その意味ではこの研究は大いに成果があったと述べています。
それでも、氏はAIが人間を超えることはないと断言しています。
話を「マネー・ワールド~資本主義の未来~第2集▽仕事がなくなる!?」に戻しましょう。
AIにできない「体験」の提供
ラスベガスでは人間がやっていた仕事がAI・ロボットに置き換わることに戦々恐々としている人たちが、デモを起こしました。
ラスベガスは例えばバーテンダーの仕事をロボットが行ったり、ホテルで宿泊客が頼んだ商品を届ける仕事をロボットが行ったりということが起こりつつあります。
その状況に危機感を覚えた、いわゆる労働者階級の人たちが自分たちの雇用を守ろうとデモを起こしたのです。
ところで、ラスベガスでほんとうに人間の仕事がロボットに置き換わっていくのでしょうか。
私はそうは思いません。
ラスベガスの価値は何かを考えれば、容易に想像できるはず。
それは「体験」です。
ラスベガスでは非日常の体験を味わいたいからこそ人が集まるのです。
街中がエンターテイメントで、24時間遊んでいられる街。一攫千金を夢見れるカジノや、夢のようなショー。
この街に来た人たちは、日常を忘れて、楽しいことを貪欲に求めることができる。
では、ロボットがそんな人たちに感動を与えることができるでしょうか。
テレビ番組ではロボットがバーテンダーの代わりをしていました。
私が思うに、それはショーの延長線上なんです。
だって、いまはバーテンダーがロボットなんて”非日常”ですよね。
人々は”非日常”を楽しんでいるのであって、カクテルだけが欲しいのではないのです。
その意味で、新井氏が提唱する「AIは人間を超えることができない」という言葉がキーポイントになります。
つまり、AIは人間を理解しているわけではないのです。
過去の経験データから最適解を導き出すのが得意なAI。
でも、人間は最適解だけがほしい回答じゃないですよね。
AI化されていく世の中、なおさら”人間味”あふれる体験がほしいようになるはず。
これも新井氏の言葉ではありませんが、人間が身に着けるべきはAIが獲得できない”意味付け”だったり、”人間臭さ””愛情””信頼”といった要素です。
バーテンダーが一人一人に人間味あふれる対応をしてくれたら、きっとそのほうがいいはず。
自らAI化して仕事をなくそうとしている日本
番組では日本がもっともAIにとってかわる可能性が高く、52%の仕事が世界に先駆けてかわっていくと予測されていました。
その理由は日本の賃金が高いからだと。
私は日本がAIにとってかわるということに同意します。
でもそれは賃金が高いからではありません。
「サービスに人間味がない」からです。
日本では「おもてなし」が大事だといいつつ、その実、店員はマニュアル対応ばかり。
私はアメリカに3年間暮らしていましたが、店員はもっと人間臭かった。
もちろん、不機嫌な店員は不機嫌さを隠そうとはしないことに、こちらもムッとしてしまいますが、ある意味人間味あふれてますよね。
フレンドリーな店員とはちょこっとした会話をするのが普通です。
それはAIにはできないことです。
でも日本はどうでしょうか。
どんどんマニュアル化、画一化して、店員と客の間には埋まらない溝が横たわります。
お店に入っても、客の顔を見ずに「いらっしゃいませ」
少しの手違いでもひたすら「すみません」
レストランのメニューは作り置きで、これはできない、あれはできない。
店のマニュアルに従っていればいいというのであれば、それこそAIでいい。
ルールを決めるのは人間
AI化に懐疑的な理由がもうひとつあります。
それは、”ルールを決めるのは人間”ということです。
多くの会社では社内ルールが決められています。
仕入れ、在庫の保管方法、棚卸のやり方、決裁の通し方、伝票作成方法、請求書の発行方法、入金確認、、、
ビジネスに必要な要素は一緒でも、その方法は会社によって異なります。
実はそれが間接費として企業の大きなコストになっています。
AIで企業のルールをマニュアル化、画一化、そしてルーチン化したとしても、そのルールを決めるのは人間。
そして、ビジネス取引とは、言わば違う言語、違う文化の企業対企業が、お互いの妥協点を見出すことで成立するわけです。
どちらかが、どちらかのルールを一方的に受け入れるなんてことはありえません。
そうなったときに、AIに妥協点が見いだせるはずがありません。
AIはその企業のルールでの最適な取引を導き出すかもしれませんが、ルール自体は人間が作り出したものであり、そのルールの正しさまではわかりようがないのですから。
ホワイトワーカーがAIにとってかわると言われていますが、それはあくまでも人間がAIに従った場合のことで、従うAIだって完璧ではない人間が作ったルールに基づいているのなら、ビジネスにはなり得ません。
つまり、AIは人間のルールを超えることはできない。
だって人間以上を知らないんですから。
人間以上というのはあくまでも大量のデータがあって、それを分析する場合にのみあてはまるということです。
AIブームは3度目だと言われています。
今回はディープ・ラーニングの成果により、人間を超えるAIがいよいよでてきた(「アルファ碁」など)ため、今回は本物だと。
”本当のところはまだわからない”というのが正解でしょう。
でも、いまのところは2045年にAIが人間を超えるシンギュラリティがくるというのは懐疑的だと思わざるを得ませんね。