朝井リョウと言えば、TVアニメ化され、2019年5月10日には横浜流星主演で映画化される 「チア男子!!」が有名ですね。
2009年には「桐島、部活やめるってよ」が映画化され、今大変な売れっ子小説家といっても過言ではありません。
そんな朝井リョウの小説「ままならないから私とあなた」のあらすじ(ネタバレあり)、本を読んだ感想についてお伝えしていきます。
朝井リョウの小説 「ままならないから私とあなた」
以下の2編が所収された小説です。
「レンタル家族」
「ままならないから私とあなた」
「レンタル家族」は60ページ強の短編作品、「ままならないから私とあなた」は200ページ強の中編作品となっています。
どちらの作品も根底に流れるものは「見ている世界の違い」です。
「レンタル家族」では主人公が、 体育会系出身特有の強い絆で結ばれていると思っていた先輩と見ていた世界の違い。
「ままならないから私とあなた」では、音楽家志望で芸術家肌の雪子と合理主義者の薫という二人の女性がすれ違っていく世界を描いています。
「レンタル家族」のどこか、星新一作品か「世にも奇妙な物語」のようなミステリアスで読者をどきどきさせるような展開で一気に引き込み、そのままの余韻で「ままならないから私とあなた」につながっていくので、次の展開が気になって仕方なく、一気に読んでしまえるときにお読みすることをお勧めします。
「レンタル家族」 あらすじ(ネタバレ含む)
体育会系特有の先輩・後輩の絆で結ばれた雄太と野上先輩。
雄太は、学生時代、野上先輩と過ごした1年間のすべて、初めての東京、初めての相手、風俗、一人暮らし、良いことも悪いこともすべてさらけだし、そうすることで野上先輩とは強い絆で結ばれていると信じていた。
ある日、同僚の結婚式で偶然見かけた気になる女性”ナントカヨウコ”が、実は新婦のレンタル友達だったということを知ってしまう。
レンタルをしてでも繕わなくてはならない人間関係を理解できず、強く否定する雄太と、そんな雄太に世の中キレイごとだけではすまされないと突き放すレンタル友達”高松芽衣”。
それでも雄太は一目ぼれしてしまった”高松芽衣”を、その関係は間違っている、雄太が信じる世界を理解してもらいたい、そして彼女になってもらいたいと思い込む。
雄太は高松芽衣に、雄太の信じる本物の人間関係を見せることで、彼女を改心させよう、そして自分を好きになってもらおうと野上先輩の新婚家庭に連れていくため、彼女に”レンタル彼女”を申し込むのだが、、
「レンタル家族」感想
一言でいうならば、どこか「ほっとする」ストーリーです。
「レンタル家族」を使ってでも繕わなくてはならない人間関係を強く否定する主人公に対して、読者である我々は皆、強い絆、強い信頼関係で結ばれた人間関係をうらやみながら、そんな関係をまぶしすぎるもの、本当にこの世に存在するものなのか、と心のどこかで思っているのではないでしょうか。
高松芽衣のいうとおり、「理想通り生きられるわけじゃない」ということをわかっている。
だからこそ、まっすぐすぎて、まぶしすぎて、純粋でひたむきで、自分の世界は間違っていないと信じる雄太に、どこか嫉妬もしくはイラつきを感じながら、高松芽衣に徹底的に論破されることで、胸のもやもやがスカッとはれるのです。
「自分もそうなんだけど、何が悪いの」というのを、高松芽衣に代弁してもらって「ほっとする」のです。
雄太はうらやましくない、どちらかというと「かわいそう」だと思って、「ほっとする」のではないでしょうか。
雄太にとって救いようのない物語でも、読者の多くは最後に安心することができるのではと思います。
「ままならないから私とあなた」あらすじ(ネタバレ含む)
主人公、雪子はピアノの”答えがひとつではない”ところが好きで、効率が悪くてもそのとき、その場所じゃなければ経験できなかったことがとても愛おしいと思っています。
一方、主人公の親友、薫は超合理主義者。
自分に無駄だと思うことは、例え学校の授業であっても切り捨ててしまう、切り捨てられるほど強い自分をもっている女の子です。
一見性格が正反対に見える二人ですが、不思議と惹かれあい、お互いのことをなんでも話し合えると関係だと雪子は信じています。
雪子は小学5年生のころ、偶然から話をするようになるワタナベ君を好きになります。
その偶然を、人間らしい、遠回りしたからこそ出会えた出会いと信じる雪子。
二人は熱狂的なファンであるバンド”Over”のライブチケットを苦労して手に入れます。
”Over”は、先進的なテクノロジーを使って観客を魅せるライブをすることで有名。
そのライブで、雪子は”何かが違う”と感じる一方、薫は”この世界を作りたい”として、雪子は得意なピアノを活かして”雪子らしさ”を追い求める音楽家を目指し、薫は”テクノロジーで人が苦労しなくても芸術を作り出せること”を開発する道に進み始めます。
それぞれの道は違えど、親友であることに変わりはないと信じる雪子は、いつものように彼女が人生をかけて作り上げた彼女だけの音楽を薫に聞かせようと、薫の家に向かうのですが、そんな薫が雪子に見せたものは、、
「ままならないから私とあなた」感想
先にお伝えしたとおり「レンタル家族」とそのテーマは同じ「見ている世界の違い」です。
雪子が信じるもの、薫が信じるものはそれぞれ決定的に違う、そしてその世界が交わることがない。
個人的には「レンタル家族」のように「ほっとする」とは少し違う感覚を受けました。
どちらかというと、ひとりの人間の内面を雪子と薫というふたりの人物がそれぞれの世界観をあらわしている感じ。
この物語では、昨今叫ばれている”経験””体験”こそが”価値”であるということを皮肉っているようにも思えます。
価値があると認めつつも、人間は楽なほうに流されていく。
そしてそれは新しい価値観として世の中に受け入れられていくのですが、だからこそ”本当に価値がある”というのはどういうことなのかということを考えさせられます。
この物語は、文庫版として新装されるにあたって、最後に加筆されました。
最後の加筆によって、より鮮明になったのは、”何が価値であるか”の読者への問いかけではないかと思います。
まとめ
■朝井リョウの小説 「ままならないから私とあなた」
・映画化された「桐島、部活やめるってよ」やテレビアニメ化され映画公開予定の「チア男子!!」の作者作品
・テーマは「見ている世界の違い」
■「レンタル家族」 あらすじ(ネタバレ含む)
・主人公雄太が信じる本物の人間関係とレンタルの世界の真実
■「レンタル家族」 感想
・正直なところ「ほっとする」ストーリー
■「ままならないから私とあなた」あらすじ(ネタバレ含む)
・”非効率でも自分だけのモノ”を求める主人公雪子と”世の中は合理的であるべき”を求める薫のすれ違い
■「ままならないから私とあなた」感想
・1人の人間の内面の葛藤を描いているのでは
・自分だけの経験に価値がありつつも、世の中の価値観は変わっていく
・読者に問いかける作品
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