こんにちわ、かわうそです。
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今日は2018年9月10日にBBCニュースのサイエンスカテゴリーに配信されたニュース記事をお届けします。
記事題名「Internet of Animals spreads its wings」 拡大するInternet of Animalsの世界
引用:Internet of animals’ spreads its wings
フランスの新会社「Kinéis」は30年間衛星を使って世界規模で動物をトラッキングしていた会社「ARGOS」から事業を引き継ぎ、新たに20基の小型衛星システムを打ち上げ、動物に限らずあらゆる”物”をトラッキングすると発表しました。
The French satellite system ARGOS that for 30 years has been used to track animals across the globe is getting a major overhaul and expansion.
A new company, Kinéis, will take over its operation and launch 20 small satellites to start tracking objects of all kinds as well.
「Internet of Things」、「IoT」という名称はマサチューセッツ工科大学の教授であったケビン・アシュトンが1999年に使い始めたのが始まりと言われています。
(2000年初頭では「ユビキタス」という言葉がよく使われていましたが、概念的には同じ意味といっても大筋問題ありません)
当時はRFIDタグを利用した物の管理をテーマにした研究だったものが、その定義を拡大させていったものとされています。
IoTは”モノ”の代表としてエアコン、冷蔵庫や各種センサーなど家庭で使われる「家電」がターゲットではありましたが、近年では”モノ”から”動物”や”ヒト”にも小型デバイスをつけてトラッキングしようという動きが盛んになってきています。
日本では”ファームノート”という企業が牛にトラッキングシステムをつけて、牛の出産時期を把握、子牛が勝手に生まれてしまうことで死産とならないように監視するシステムを提供しています(子牛の死産は経済的に相当な損失らしいです。)
画像引用:ファームノート株式会社 2018年9月12日時点
こうした動物に装着される小型デバイスは何かしらの通信によって位置情報をサーバ側にアップしなければいけません。
日本ではエリアも限定され、地上の通信ネットワークでも通信できないところというのはほとんどありませんが、海外の広大な放牧地ではそうはいきません。
広い範囲での通信ネットワークがInternet of Animalsの課題でした。
それをこの「Kinéis」という会社は衛星システムをつかって解決しようしているのです。
これにより、これまでは地上のモバイル通信が届く範囲でしか実現できなかった、広いエリア、例えば海洋での動物のトラッキングも可能としています。
これまでも海洋動物のトラッキングには様々な機器が使われてきましたが、通信ができるのは通信エリアに入ったときのみという欠点がありました。
衛星システムを利用することで、全世界どこにいても通信ができることになります。
ここでポイントが2つあります。一つ目は、打ち上げる通信衛星の小型化です。
近年、日本でもH2ロケットに東京大学が、作った超小型衛星を搭載して実験をしていますが、近年の技術革新により衛星自体の大きさが小型化されればされるほど、打ち上げる数を増やすことができ、それにより安価で世界を網羅できる通信ネットワークを構築できるとしています。
2つ目は装着する装置の小型化と安価なコストです。
動物につけるため、大掛かりな装置は利用できません。
また、動物が群の中で得意な動きをしたり、ケンカや事故によって死んでしまうこともあります。
そのとき、装置が一緒に破壊されたり、行方不明になってしまうことは多々あるでしょう。
そのとき、その会社装置のコストが見合わなければ、ビジネスとして成り立ちません。
また、小型化によってバッテリーがどの程度持つ物になるのかもポイントとなります。
引用:‘Internet of animals’ spreads its wings
このシステムでは設定変更をサーバからエンドの端末側に送信できるとしています。
つまり、双方向の通信が可能ということですが、双方向の通信にはそれだけ電力が必要となるため、小型化によってバッテリーが小さくなれば、通信できる期間が短くなり、分析に必要な期間のデータが得られない可能性もでてきます。
このニュース記事で触れているもう一つのポイントとしては、規模の経済となるため、このシステムを導入する大規模なパートナーがビジネス成功の鍵となると言っています。
記事には書かれていませんが、気になるのは衛星通信システムを使う場合、空が見える場所にないと通信できないのではということです。
例えば海洋動物のトラッキングを行う場合、海中深くに潜ってしまえば通信はできないでしょう。
また、全世界広範囲に広がるほど広い行動範囲が必要な動物のトラッキングが必要なビジネスは何かということです。
研究のためだけではビジネスの継続性がなかったり規模が大きくならないため、事業として成り立たない可能性はあります。
ただ、Kinéis社のビジネスでは当然動物だけを対象に考えているわけではありません。
例えば、南米の鉱山などに使われる重機に取り付けることで、重機の状態を常に監視し、故障検知や予知をすることで、故障時の時間的な損失等を回避することができるようになります。
また、魚につければ魚群探知機、食物を荒らす害虫につければ害虫の分布図から、対処法を考え農作物への被害を劇的に減らせる可能性もあります。
普及にはプラットフォームの構築、セキュリティ、クラウドなど解決すべき問題はたくさんあります。
それでも小型衛星をつかった双方向通信のトラッキングシステムはまだまだ未知の可能性を秘めているといえるでしょう。