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今回は、BBCNews.com で2018年9月20日に配信された”How China’s GPS ‘rival’ Beidou is plotting to go global~中国版GPS”北斗(ベイドゥ)”の野望~”という記事のご紹介です。
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引用元:2018年9月20日配信 BBCNews.com ”How China’s GPS ‘rival’ Beidou is plotting to go global” 2018年9月26日記事引用
中国は中国版GPSと呼ばれる「北斗衛星測位システム」を全世界へ展開するべく急速に拡大しています。果たしてアメリカがすでに全世界に展開中のGPS(グローバル・ポジショニング・システム:これは一般名称ではなく、アメリカが構築したシステム名称です)に勝てるのでしょうか。
中国北部、大林台で畜産を営む男性は、これまで家畜のために水を運ぶため何キロもオートバイで旅をしなければなりませんでした。
新華社通信によると、彼はいまではただ自動給水機にメッセージを送信するだけでよいといいます。
「いまではどこにいてもいつでも家畜に水をやることができる」
このシステムは北斗衛星測位システムによって運用されており、いまでは農業からミサイル誘導にまで使われています。
もともとは、対米国との戦争を仮定し、GPSに頼っていては軍事的にリスクが大きいとして開発されたものですが、いまは商用利用向けに拡大しています。
先月、中国当局は中国の約半数33,500台のタクシーに北斗衛星測位システムの搭載を義務付けました。
2020年までには新車には必ずこのシステムを搭載することを義務付けるといいます。
国内のスマートフォンメーカーであるHuaweiやXiaomi、OnePlusなどは、すでに北斗衛星測位システムを彼らのスマートフォンに搭載していますが、今年9月12日に発表された新しいiPhoneには搭載は見送られました。
中国はいま、そのテクノロジーを第三国にしきりにアピールしています。
北斗衛星測位システムはGPSの代替としてアジアに展開されており、すでにナビゲーションデータの提供も開始されました。
北斗衛星測位システムのシステムチームデザイナーであるYang Changfengはこう語ります。
「中国の北斗衛星測位システムは世界の北斗衛星測位システムになる。衛星ナビゲーションシステムのマーケットは北斗衛星測位システムが獲得するだろう」
宇宙シルクロード構想
中国語で”北斗七星(大熊座)”の名前を冠し、40年以上も研究されてきた北斗衛星測位システムは、2000年にようやく1号が打ち上げられ運用を開始し、アジア太平洋地域での運用は2012年になってからです。
2020年の完成までに35基の衛星が打ち上げられることになりますが、今年だけでも10基が打ち上げられ、今週も2基以上が打ち上げられる予定です。
メディアは「これまでと比較にならないほど打ち上げが集中している」と伝えています。
2018年末までには、「宇宙シルクロード」と呼ばれる中国の大規模なインフラと貿易プログラムであるBelt and Road Initiative(BRI)に沿った国々をカバーする予定です。 北斗衛星測位システムはすでに、パキスタン、ラオス、インドネシアを含むBRIに関わる30カ国をカバーしています。
英国連邦防衛安全保障研究所(FSA)のアレクサンドラ・スティッキングズは、「影響力の拡大については確かにその側面があるが、経済的安全性についてもそうである」と述べています。
GPSに匹敵できるグローバルナビゲーションシステムは、宇宙空間においてもリーダーとなるという中国の大いなる野望の核となるシステムです。
「自国のシステムであることの最大の利点は、他国に依存しないという点で、”セキュリティ”であるといえるでしょう。」
GPSが完全にダウンすると、バックアップとしての役割も果たします。
現在、ロシアのGlonass、ヨーロッパのガリレオ、GPSの3つの衛星測位システムがあり、GPSが最も広く使われています。
英国は、Brexit後のガリレオにアクセスすることができない可能性があるため、独自の衛星ナビゲーションシステムの構築も検討しています。
では北斗衛星測位システムは果たして世界で最も有力なシステムとなるのでしょうか。
「世界は中国派とアメリカ派に二分されるでしょう。」
香港の衛星市場調査会社Orbital Gateway Consultingの創設者であるBlaine Curcio氏は語ります。
「中国派はアメリカやヨーロッパのシステムを信用しなくなるでしょう。ただし、差し迫った危機がない発展途上国では複数のオプションがあることはメリットになります。」
中国では現在、第三世代の北斗衛星測位システムを開発しています。
このシステムでは誤差数センチメートルを実現しようとしています。
一方で、北斗衛星測位システムの電波を受信するチップセットは近年値下がりしており、GPSの技術と同等レベルにはなっています。
このように北斗衛星測位システムは商用利用分野で拡大を続けていますが、一方でGPSと比べて明確に劣っている点があるのも事実です。
それは、通信方式です。
GPSでは衛星からの電波を受信するのみという一方向通信ですが、北斗衛星測位システムは双方向通信が必要になるという点です。
「世界的な衛星ナビゲーションシステムの開発と運用は非常に困難です」とSecure World Foundationのディレクター、Brian Weeden氏は語ります。
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日本では、準天頂衛星システム「みちびき」が打ち上げられ、その精度は誤差数センチメートルを実現するといわれています。
しかし、日本のシステムはあくまでもGPSの補完であり、日本でのみ利用できるものということで開発されたものです。
中国の、仮想敵国アメリカに対抗する全世界規模の衛星測位システムには到底かなわないでしょう。
つまり、日本においても北斗衛星測位システムは導入すべきということになります。
世界はおそらく好むと好まざるとに限らず、中国がその存在感をよりアピールし、アメリカと完全に対抗するようになるでしょう。
そのとき日本はもちろんアメリカの防波堤という役割により、アメリカのシステムをないがしろにするわけにはいかないでしょうが、”経済戦争”という観点で見たときに、地政学的に中国と隣接する日本が中国を無視したマーケット戦略をとることはほぼ不可能になるというのが大勢ではないでしょうか。
その意味でいまから北斗衛星測位システムを研究し、導入に向けた準備を行っておくというのが民間会社のあるべき姿だと思われます。