同性のカップルには朗報かもしれません。
中国科学院の研究チームがオスのマウス2匹から子供を生み出すことに成功したと報じたのです。
出典元:BBC News.com Same-sex mice have babies 2018/10/11記事(2018/10/13引用)
「同性のマウスから子供が生まれる」
遺伝子工学の世界で生殖ルールを破る偉大な成果が生まれました。
2匹の父親のマウスから子供を作り出すことに成功したのです。
残念ながら生後すぐに死んでしまいましたが。
研究者はなぜこのような実験を行ったのでしょうか。
私たち人類を含むすべての哺乳類は、異性による性交渉なしに子孫を生み出すことはできません。
ところが、哺乳類以外の爬虫類や両生類、また鳥類では単為生殖が可能です。
今回の研究の目的は、同性から子供を作るという生殖のルールを破るのに、どちらの性が適しているのかということを調べるためでした。
母親の幹細胞から子どもを作り出す実験は行われていた
これまで、母親同士から子供を作りだす研究というのは行われてきました。
引用:卵子2つから作られた「二母性マウス」が誕生! 2007/10/11
2004年には東京農業大学の研究チームが「未成熟な卵子細胞はゲノムインプリント遺伝子について、比較的精子に近い性質を持っている」という点に着目し、メス由来の染色体を用いた精子類似体を作成。これを用いることでメスのマウスのゲノムしか有していない胚を構築し、「2匹のメスの両親からマウスを生み出す」という実験に成功しています。この時に誕生したマウスは「かぐや」と名付けられ、ゲノムインプリンティングの謎を解き明かす一歩となりました。
我々の性は、DNAに刻まれたゲノムインプリンティングと呼ばれる、性別を決めるゲノムが誕生時に刷り込みされることで決定されるということがわかってきています。
今回の研究では、オスのマウスから胚性幹細胞を取り出し、遺伝子編集技術を使って3セットの遺伝子情報を書き換えることで、両性の機能を有した胚性幹細胞を作り出すことに成功。
その胚性幹細胞を使って培養技術によって子ネズミを誕生させたということです。
(オスのおなかから生まれてきたわけではないんですね!)
この技術は、アンジェルマン症候群という難病に対して有効である可能性があります。
アンジェルマン症候群:
重度精神発達の遅れ、てんかん、失調性運動障害、容易に引き起こされる笑いなどの行動を特徴とする疾患である。15,000出生に一人くらいの頻度であり、日本には3000名以上が存在すると考えられる。
|
私たちは同性のパートナー同士で子供を授かることができるようになる?
あなたがネズミではなければ、その心配はしなくていいでしょう。
オークランド大学の教授テレサ・ホルムは、「チャンスはあります。でもまだまだ先の話でしょう。我々は同性の親からできた子供が健康に育つのか、そもそも倫理的な問題や安全性の問題が山積されているのですから」と話します。
フランシス・クリック研究所のロベル・バッジ教授はこういいます。
「二人の母親から子供が生まれることですら、まだまだ可能性の域を超えません。ましてや二人の父親からというのは考えにくいですね」
「私たちは性交渉しなくなりますか?」
「いいえ、まだ先でしょう」
遺伝子情報操作の世界
人類の謎を解き明かすために、研究者たちは日々研究を重ねています。
一般的と考えられている異性同士の生殖行為ですら、その理由は定かではないのです。
あらゆる生物には遺伝子情報という設計図があることがわかってきており、さらにはその遺伝子情報はおそるべき早さで解読されつつあります。
参考出典:小麦のゲノム解読成功、遺伝子を特定
さて、遺伝子解析が進み、人類自体の設計図が完全に解読された世界がきたとき、我々人類はどのような生物になるのでしょうか。
SFの世界ではありますが、あらゆる環境に適応し、過酷な世界でも生きていける生物へと自らを書き換えるのでしょうか。
人類はいま火星を目指しています。
ところが、火星にたどり着く前に、有害な放射線であふれかえる宇宙を長時間耐えなくてはいけません。
火星にたどり着いたところで、火星が地球のような快適な環境であるとはとても言えないでしょう。
そのとき、人類は環境に順応するよう自らの体を作り変えて、新天地を征服することができるようになるのでしょうか。
少し古い映画ですが、1997年に「ガタカ」という人類を遺伝子レベルで選別する世界というものを描いた映画があります。
遺伝子で選別される世界がどのようなものか。
興味がある方はぜひ。